ドローンと空飛ぶクルマのこの1年-セキュリティを中心に

こんにちは。CTO室長の浅野[@masakz5]です。
昨年(2022年)12月に改正航空法が施行され、いわゆるレベル4(有人地帯での補助者なし目視外飛行)が可能となりました。市街地でのドローンによる物流や宅配が一層現実的になる一方、災害時の救助や建築現場における測量など、ドローンの適用領域が大幅に拡大する可能性が見込まれます。

本ブログでは、昨年もドローンと空飛ぶクルマのセキュリティについての記事を書きましたが、今回はこの1年でのアップデートを中心にまとめてみたいと思います。

ドローン – 改正航空法の施行


冒頭にも述べたように、2022年12月5日に改正航空法が施行され、ドローンのレベル4飛行が可能になりました。
国土交通省ではレベル4のポータルサイトを公開して社会受容性の醸成を図るとともに、型式認証・機体認証操縦者の技能証明の申請方法について解説するページを公開しています。

前回の記事の執筆時点でパブリックコメントを募集していた「無人航空機の型式認証等における安全基準及び均一性基準に対する検査要領」(以下「検査要領」)については、コメントを受けて修正が行われ、正式な文書(サーキュラー No.8-001)として公開されています。
前回解説したセキュリティに関わる部分の記述に関しては大きな変更がありませんので、ぜひ前回の記事をご参照ください。

さらに、「無人航空機の型式認証等の取得のためのガイドライン」が検査要領及び認証プロセスの手引きとして公開されています。このガイドラインでは、型式認証のプロセスが解説されており、安全基準、均一性基準それぞれについての基準の概要、検査のポイント、安全基準についての適合性証明方法(MoC)について丁寧に解説されています。

この中で、前回も解説した区分115の「サイバーセキュリティ」の項目の適合性証明方法をみると、


  1. 安全性に影響が及んだ事態 = Threat Conditionを定義し、それを引き起こす可能性のある資産(Asset)を抽出する
  2. 境界(Perimeter) と、その外側の環境(Environment)を明確にする
  3. リスクアセスメントを行い、リスクの評価と必要に応じた緩和策を定義する
  4. 上記の結果とセキュリティ対策の維持手順・指示をセキュリティ適合性証明完了報告書としてまとめる

といった形で、型式認証・機体認証を受けようとする事業者に対して安全基準への適合性を証明する手順を示しています。

さらに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMo プロジェクト)」において上記ガイドラインのMoCをさらに詳細に解説する解説書の作成を目標とした「無人航空機の認証に対応した証明手法の事例検討WG」を開催しています。

すでに認証を取得した事例も出てきています。2023年3月にACSL社のドローンが第一種(=レベル4相当の飛行を行うことができる機体)型式認証及び機体認証を取得し、日本郵便がレベル4飛行で荷物を配送する実証実験を行いました。


ここまででは主に航空改正法における型式認証・機体認証を取り上げ、ドローンの「安全な飛行」のための機体そのもののセキュリティについて触れてきました。
実際には上記以外にも、ドローンとクラウドシステムの間の通信の秘匿性の確保や相互の認証等、ドローンを取り巻くエコシステム全体のセキュリティについても考慮することが、今後のドローン利用による産業発展には必須になってくるでしょう。

空飛ぶクルマ – 万博とその後を見据えて


空飛ぶクルマの直近の目玉はなんといっても2025年の大阪・関西万博での展示・飛行でしょう。
既にANA、Joby Aviation、JAL、丸紅、SkyDriveの5社が会場で展示・飛行を行うことが決定し、使用されるSkyDrive、Joby Aviation、Volocopter、Vertical Aerospaceの機体について、飛行に必要となる航空法に基づく型式証明の申請が既に行われています。

また、万博後に向けた動きも既に始まっています。
万博ではパイロットが空飛ぶクルマを操縦する形になると思われますが、将来的には自律飛行によってパイロットを不要とし、飛行単位あたりのコストを大幅に削減することが見込まれています。
「空の移動革命に向けた官民協議会」においても、本年度から貨物輸送用途での自律飛行についての検討が始まる予定です。
空飛ぶクルマの自律飛行では、よりソフトウェアや通信に対する依存度が高くなることが予想されます。
通信機能を持った大きなIT機器が、人を乗せて空を飛ぶイメージになるのではないでしょうか。
万が一事故が発生した場合のインパクトを考えると、ソフトウェアや通信の脆弱性への対策が非常に重要になるのは間違い無いでしょう。

JapanDrone2023

2023年6月26日から28日にかけて、幕張メッセでJapanDrone2023が行われます。
GMOインターネットグループも、GMOグローバルサインとGMOサイバーセキュリティbyイエラエを中心とした空のセキュリティへの取り組みについて出展する予定です。
また、国際コンファレンスでは26日の15:10より、経済産業省、国土交通省のご担当者と民間から有識者をお招きし、私がモデレーターとして国内外の制度整備の状況等についてお話を伺う予定です。
ご興味のある方はぜひ会場に足をお運びください。