Self Sovereign Identity (SSI)のユースケース その2

SSI

こんにちは。CTO室長の浅野@masakz5です。以前本ブログでSelf Sovereign Identity (SSI)のユースケースをいくつか紹介しましたが、早くもそれから1年が経ちました。
この1年間で事例も増えてきていますので、改めていくつかご紹介したいと思います。
ありがたいことに、アメリカのTrinsic社が中心になってVerifiable Credential(VC)を採用し得ているプロジェクトをまとめたページを公開していますので、こちらからピックアップしてご紹介します。

ユースケース

日本のワクチン接種証明書

2021年12月から電子版のワクチン接種証明書の発行が始まりました。2022年3月6日時点で約450万枚の証明書が発行されています。(デジタル庁のオープンデータExcelファイルより)

既に取得された方はご存知かと思いますが、ワクチン接種証明書には日本国内用と海外用の2種類が存在します。国内用に関してはVCIという団体が策定したSmart Health Cardsという規格に則った証明書が発行され、海外用に関しては、Smart Health Cards規格の証明書とICAOが策定したVDS-NCという規格に則った証明書の2種類が発行されます。
(https://www.digital.go.jp/policies/vaccinecert/faq_06#q04)
このうちSmart Health Cards規格の証明書については、W3Cが定めるVerifiable Credentialの仕様に則る形になっています。ただし、Smart Health Cardsは信頼モデル(署名者の鍵をどのように信頼するか)からは切り離して定義するという前提にたっており、x.509証明書を使った従来のPKIモデルも使用することが可能となっています。
一方、VDS-NCは従来のx.509証明書を使用するPKIモデルをベースとした規格になっています。
厳密にはSSIとは言えないかもしれないですが、VCモデルを使用した例として取りあげました。

Farmer Connect

Farmer Connectは、ブロックチェーンを使ってコーヒー豆の生産者から消費者までのサプライチェーンのトレーサビリティを実現するための取り組みです。
消費者は購入したコーヒー豆の生産者の情報を見ることができ、さらにそこから生産者へ寄付を行うこともできるようになっています。
Farmer Connectではさらに、生産者に対してFarmerIDという証明書を発行しています。これは、生産者の取引実績や希望があれば個人情報含んだVCを発行し、生産者が新しい取引先と取引を始める、あるいは教育、保険、金融サービスを受ける際に信用情報として提供することができるようにするサービスです。

MemberPass

MemberPassは、アメリカの信用組合(Credit Union)の会員に対してVCを発行することで、対面/非対面双方での諸手続きをスムーズに行うことを目的としたプロジェクトです。
各信用組合がこのサービスを使用することで、組合員のプライパシーを守りながら高いレベルの認証を行うことができるようになります。組合員に向けてサービスを提供する第三者がわざわざ確認のために信用組合へ問い合わせを行う必要がなくなるため、組合運用にかかる手間やコストを下げることができるとしています。

Yoma

Yomaは、グローバルレベルで若者に就職や企業の機会を与えることを目的に立ち上げられた”デジタルマーケットプレイス”です。
Yomaは若者に対してIT関連や企業、農業等に関するラーニングコンテンツを提供し、それらの履修状況等をVCとして発行します。また、環境保全に対するボランティア活動等をタスクとして定義し、それらのタスクの参加状況も併せてVCとして発行します
有能な若者を探している企業や投資家がこのマーケットプレイスにアクセスし、若者がVCを彼らに提示することでマッチングを行います。
VCの持ち主である若者自身がその提供をコントロールすることで、自身の情報が不用意に拡散してしまうことを防ぎながら、グローバルに就労機会や投資を受ける機会を提供する仕組みとなっています。

まとめ

上記で見てきたように、SSI/DID/VCモデルを使用したサービスは続々と現れています。また、VCのデータモデルだけを採用し、署名鍵の担保については従来のトラストフレームワークを使うような形もあり、興味深いところです。
SSI/DID/VCについてはまだ標準化も議論の途上にあるものが多いので、その辺りもユースケースと同様継続してウォッチしていきたいと考えています。