こんにちは。GMOグローバルサイン・ホールディングスの宗形 (@shujimuna)です。
ビジュアルシステムの研究開発、3Dモデル全般のデザイン/作成を担当しています。
本記事では、2D/3D生成AIを活用した3Dキャラクター制作の事例について、その効率化と技術的側面を深掘りしてご紹介します。
3Dキャラクター制作は、ゲーム、映画、VR/ARコンテンツなど、多岐にわたる分野で不可欠な技術ですが、従来の制作プロセスは多くの課題を抱えていました 。本稿では、生成AIの導入がこれらの課題にどのように対応し、制作ワークフローをどのように変えていくのかを具体的に解説します。
3Dキャラクター制作の現状と課題
従来の3Dキャラクター制作は、複雑で時間とコストがかかるプロセスです。これには、専門知識と技術が要求され、制作期間が長期化する要因となっていました 。
従来の制作フローの詳細
- ネタ出し(文字ベース): 2~3時間 – キャラクターの基本的なコンセプトをテキストベースで考案する段階。
- ラフスケッチ: 1~2日 – 複数のラフスケッチを制作し、キャラクターの初期デザインを模索する段階。
- 選定: 2~3時間 – 作成されたラフスケッチから、最も有望なデザインを選び出す段階。
- コンセプトアート制作: 1~2日 – 選定されたデザインを基に、詳細なコンセプトアートを制作する段階。
- 選定: 1~2時間 – コンセプトアートの最終確認と修正を行う段階。
- 3面図作成(指示書込み): 1日 – キャラクターの正面、側面、背面図を作成し、3Dモデリングのための詳細な指示を記述する段階。
- 3Dモデル&テクスチャー制作: 約4日 – 3Dモデリングソフトウェアを用いて、キャラクターの形状を作成し、テクスチャを適用する段階。
- リグ(ボーン)ウェイト設定: 1~2日 – 3Dモデルにボーン(骨格)を設定し、アニメーションのためのウェイトを調整する段階 。
このフローを見ると、各工程に多くの時間と専門知識が必要であり、制作プロセス全体の効率化が重要な課題であることが明確になります。
生成AIによる新たな制作フローの可能性
近年、2D/3D生成AIの急速な発展により、これらの課題を解決し、制作フローを大幅に効率化できる可能性が見えてきました 。
生成AIを活用した制作フロー
- 方向性を決定: 2~3時間 – キャラクターの基本的な方向性を決定する段階。
- 画像を複数枚生成: 数分 – 2D画像生成AIを用いて、複数のキャラクター画像を生成する段階。
- 選定: 2~3時間 – 生成された画像から最適なものを選択する段階。
- 3Dモデルを生成: 数分 – 3Dモデル生成AIを用いて、2D画像から3Dモデルを生成する段階。
- 自動リグ&ウェイト設定: 数分 – 生成された3Dモデルに自動でリグとウェイトを設定する段階 。
この新しいフローでは、2D画像生成AIが [ネタ出し/ラフスケッチ/コンセプトアート工程] を効率化し、3Dモデル生成AIが [3面図作成/3Dモデリング&テクスチャー制作工程] を自動化・高速化します。これにより、制作期間の大幅な短縮と、クリエイターの負担軽減が期待できます 。
1. 方向性を決定
今回はアニメーションを入れるところまでが分かりやすい、キャラクターにしてみましょう
2. キャラクター画像を生成
実際に、生成AIを活用して3Dキャラクターを制作するプロセスを具体的に見ていきましょう。
「Deep AI, Inc.」の提供をする「AI image Generator」を利用します。
画像生成に関しては立ち絵を生成できるものであれば、ChatGPTなどの画像生成でも代用ができます。
ログインなど無しで手軽に使えるのでこちらのサービスを利用しています。
今回のプロンプト(指示文):
- 正面を向く
- 2.5等
- 2足立
- デフォルメされた可愛い猫
- 未来的なサイボーグの体
- 両腕を広げる
- 背景は黒

生成時間:約1分
3. 3Dモデルを生成
「Image to 3D Asset with TRELLIS」を使用し1枚の画像から3Dモデルを生成します。
3Dモデルの生成に関しては、1枚の画像から3Dモデルを生成するサービスや技術が登場しています。
「Rodin」や「Tripo AI」があります。
今回は、Microsoftの開発・公開している「TRELLIS」を利用します。
こちらもHugging Faceから手軽に利用ができるので下記の手順で生成をします。
手順:
- 「AI image Generator」で生成した画像をアップロード
- 「Generate」ボタンをクリック
- 「Extract GLB」ボタンをクリック(メッシュデータ生成)

生成時間:2~3分
Extract GLBボタンをクリックすることで .glb ファイルの生成と ダウンロード が行えるようになります。
4. 3Dモデルの調整とアニメーション自動リグ&ウェイト設定
「Blender」で3Dモデルを確認し、必要に応じて修正していきます。今回は不要なメッシュの除去と .glbを .fbxに変換する作業をおこないました。修正箇所が無い場合は Aspose.3D というサイトから.glbを.fbxにコンバートすることが可能です。
「Adobe Mixamo」にFBXデータとしてインポートし、自動リグ&ウェイト設定とアニメーション付けをおこないます。
手順:
- FBXをインポート
- 基本設定
- 任意のアニメーションを選択
- アニメーション付きFBXをエクスポート
所要時間:3~4分
最終的に、Blenderでアニメーションを確認し、UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジンで利用可能な状態にしました 。
生成AIを活用した成果と今後の展望
今回の検証により、生成AIを活用することで、3Dモデル制作の生産性を大幅に向上させることができました 。
生成AIの活用度合いや制作物の複雑さによって削減率は変動しますが、非常に大きな効果が期待できます 。
今後は、生成AIの精度がさらに向上することで、プランナーやディレクターがより直感的に理想のキャラクターを制作できるようになるでしょう。これにより、クリエイティブなプロセスがさらに加速し、より多様で高品質な3Dコンテンツの制作が期待されます。
まとめ
本事例では、「AI image Generator」「TRELLIS」「Blender」「Mixamo」という4つのツールを組み合わせることで、3Dモデル制作の効率化を実現しました 。生成AIは、3Dキャラクター制作の未来を大きく変える可能性を秘めており、今後の発展が非常に楽しみです。